読書道楽

「知的生活」P・G・ハマトン(講談社

奈良の古本屋でわずか200円で購入したもの。この本は英語の勉強にも使われるほどの原文は流麗なものだということであるが、翻訳もそれに劣らず流麗で、極めて読みやすかった。でその内容は、というと確かに洗練された、知的な感じが横溢するものであり、またなるほどと思う叙述も沢山あった。例えば時間を大切にというのは言うまでもないことであり、それよりも大事なのは何をこの短い人生の間になし、何をなさざるべきかの判断だということなどはもっともと思う。私も、この叙述のとおりと思うのであり、本当に気の多いことばかりを言ってはいられない。本当にしようと思うことをもう一回吟味し、新たな人生計画を立てるべきだと思った次第である。「星の如く、急がず、しかし休まず、人それぞれに神より受けし努めを果たせ」との言葉、それに「休め、そして感謝せよ」との引用句は心に残った。また、今は正面切っての主張にならない、妬みや嫉みを恥ずかしいものとする高貴な感覚、勇気等のいわゆる騎士道精神を感じた。しかしながらえ、いわゆる貴族趣味的な高貴さとか、知的な洗練を感じる反面、より魂を沸き立たせるごとき迫力はなく、人間の深淵に突き入る深さは感じなかった。従って、人類の古典との評価を今後とも受けることはないであろうし、これからも永遠に読み継がれるというものでもないと思う。中に、「どんなところも思いのままに植民地化し占領してきた偉大な白色人種の一員として生活し、日々お互いに助け合い、その思想と大望とを分かち合うためには・・・・新聞を毎日読む必要があるのです。」との叙述が有り、黄色人種で日本人の私はムカーっとするのであるが、その腹立ち紛れでいうのではない。人間の怖さ、血を騒がせる高貴さ、慟哭させる激しさ等とは無縁のいわゆる知識人のスマートさに終始しているのであり、その見事な英文が英語の教科書としてはこれからも使われるであろうが、古典とはなり得ないということである。