読書道楽

おじさまの読書感想文シリーズ。第一弾は「悪魔の事典」(A・ビアス著:角川文庫)。ちびちび読み終えた。正直言って読み通すのは苦痛であった。それで、ちびちび読み継ぎやっと読み終わったわけである。明らかに何かを、あるいは誰かを意図して風刺していると思われる叙述がふんだんにあるのであるが、それが今では分からないのが多く、それが読みづらい点である。しかし、例えば【「下劣」=自分に関して他人が吐く批判点な言葉】、とか【「苦痛」=不愉快な精神状態。身体に対して何かが行われているという肉体的な根拠の場合もあれば、他人の幸福が原因の純粋に精神的な場合もある】、などというそれ自体思わずギクッとし、なるほどと思わせるものも沢山ある。対になっている場合もある。【「寸鉄人をえぐる言葉」=他人に対して自分が吐く批判的な言葉】は、先ほどの「下劣」の定義と対となるものであって、両者合わせて再びにんまりと若干反省の感情も含めての嗤いを誘われるものもあるのである。また【「一年」=365個の失望からなる一区切りの期間】のようにしんみりと、感傷的になってしまう定義もある。【「平和」=国際関係で、戦争と戦争の間の騙し合いの期間】のような深刻な定義もある。日本は平和だというが、アメリカの軍事力の庇護のもの、深刻な冷戦下でもがむしゃらに経済活動に専念できた。今、新たな冷戦下、直接日本領土を狙う隣国が台頭し、何となく戦争に巻き込まれる立場に立たないで済んできたというわけにはいかない情勢である。【「結婚」=主人一人、主婦一人、それに奴隷二人からなるが総計では二人になってしまう共同生活の状態又は状況】との定義がある。夫婦ではお互いが相手の奴隷になるとなるということで奴隷二人が出てくるわけである。なかなかしゃれた定義ということなのだが、私はどういう意味か分からずにいたところ、妻は、「しゃれた言葉だわ。あなた沢山本読んでいるのにこれピンとこないの。」などと言い、その意味するところを私に教示してくれたのである。またもや賢い妻にたじたじとなる私でした。ちなみに私もビアスのひそみにならって定義を一つ。「恐妻家」=家庭においては誇りを捨て、賢い妻にたじたじとなりながら、結構幸せだと思っている、男の風上にもおけない男性。